日常をつづる

「やだ！キモイ人が居る！」
一瞬ギクッとしてキョロキョロあたりを見回した。
レジで順番待ちをしているコンビニの中。
完全に死角から聞こえた声だったのできっと俺のことじゃない。頑張って自分以外のキモイ人を探す。きっとあいつに違いない。うん。なるほどキモイ。絶対俺よりキモイ。

でも良くないと思うよ人のことキモイとかいうのは。もうね、ほんと怖い。そんな文化を作ったのは誰？
外ででかい声で言う事ではないよ。勘弁してください。そんなこという人は今突然ゾンビが現れて食いついたとしても絶対助けてなどやらん。
ゾンビだってきっとそこら辺は汲んでて、お洒落な人から襲い掛かると思う。なんか色彩とか派手そうじゃない。生命力あふれる感じで。
ゾンビ的にもなんかこう、ピンとくるものがあるんじゃないか。
漫画家とかはゾンビ的にあんまり美味しくないというか、生きてるんだか死んでるんだか良くわからないのでとりあえず保留するかと。顔色もなんか仲間っぽいし。ゾンビは僕らの味方。

などとブツブツ呟きながら炎天下を歩く。
ふいに吹き抜ける風に甘い香りを感じて俺は顔を上げた。
どこかでクチナシの花が咲いているのか。
気づけば足元の影も黒々と、空の青は日増しに深くなっていた。

夏が始まるのだ。

俺にはあんまり関係ないけどな。